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リフォーム予算と費用の賢い決め方(1)

基礎部分の補修費用は数百万円単位でかかる

森田祥範森田祥範

2016/01/30

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基礎のコンクリートに亀裂が見つかったら?

一戸建て住宅の土台となるコンクリート部分を「基礎」といいます。リフォームで、住宅の基礎部分からつくり直すケースはめったにありません。とはいえ、築年数の古い住宅や、地盤が弱い地域に建てられた住宅では、基礎工事からやり直したほうがよいケースもまれに見られます。

基礎からやり直したほうがよい住宅は、外見からでもわかります。晴れた日の日中、自宅の基礎部分をじっくり見回ってみましょう。

注意すべきポイントは亀裂(クラック)です。幅0.1ミリメートル未満の亀裂は「ヘアクラック」といい、コンクリートが乾燥したことで表面に生じた亀裂ですから、問題ありません。心配なのは、幅0.5ミリメートルを超える亀裂で、奥のほうまで達していそうなケース。基礎にこうした亀裂が見つかった場合、リフォーム計画を抜本的に見直す必要も出てくるので、耐震診断の専門家などにチェックしてもらうことをおすすめします。

不等沈下(不同沈下)には要注意

住宅の基礎部分に亀裂が生じた場合、その原因としては不等沈下(不同沈下)が疑われます。

住宅の地盤が均等に沈下した場合、それほど大きな影響はありませんが、地盤が不均等に沈下した場合、住宅の基礎部分に斜めの力が働くため、住宅各所に大きな影響が出ます。このように、不均等に地盤が沈むことを不等沈下(不同沈下)といいます。

不等沈下(不同沈下)の引き金となるのが大きな地震です。また、近隣で行なわれる宅地造成高・マンション建設・道路補修・水道管交換などの各種工事により、地下水の流れが変わって突然起こることもあります。

不等沈下(不同沈下)を放置しておくと、傾斜の角度も徐々に大きくなっていき、ドアや窓が開けにくくなるだけでなく、最終的には倒壊のおそれも出てきます。そのため、もし住宅の地盤が不等沈下(不同沈下)しているのであれば、早急に対策しないといけません。

一例をあげましょう。

近くの道路で下水道工事が行われて数日後、ある一戸建て住宅で、道路に面したブロック塀が長さ10メートルにわたって沈み始めました。沈んだ深さは10センチメートルほど。住宅基礎の立ち上がり部分と犬走り(軒下に通路状に延びたコンクリート打設部分)にも大きな亀裂が入っています。さらに数日後には、道路に面した基礎部分が沈み、住宅自体明らかに傾き始めました。

そこで緊急の復旧工事を実施。ブロック塀は解体し、住宅の道路側基礎と土台を連結していたボルトを外し、建物をジャッキアップしました。明らかに沈んでいた地盤は新たに土砂を入れて埋め戻し、土壌を改良。基礎や犬走りの亀裂も補修しました。さらに、ブロック塀を新設。費用は総額で200万円に上りました(ちなみに、費用は後日、下水道工事を行なった自治体から弁済されました)。

基礎部分を補修すると、このように数百万円単位の出費になります。工期は1〜6週間程度。基礎工事を全面的にやり直す場合は、リフォームではなく、建て替え工事になります。その場合はもちろん、費用は1000万円以上かかるはずです。

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ベタ基礎か布基礎か

ここで、一戸建て住宅の基礎部分について、さらに解説しておきましょう。

一戸建て住宅の基礎の構造には、大きく分けて「ベタ基礎」と「布基礎」があります。

ベタ基礎とは、住宅の床全面にわたって、鉄筋入りコンクリートが打設されている基礎のこと。建物を、床全体に打ったコンクリートで支える形になります。

布基礎とは、外壁など建物を支える耐力壁に沿って、逆T字型の立ち上がり部分がぐるりと連続している基礎のこと。建物を、大きな枠の形に打ったコンクリートで支える形になります。

従来の一戸建て住宅では、布基礎が採用されることが多かったのですが、ここ十年ほどの間に、ベタ基礎のほうが優勢になりました。今日、軸組在来工法や2×4工法で建てられる住宅はほとんど、ベタ基礎を採用しています。ベタ基礎は布基礎よりも一工程少ないため、工期を圧縮できるメリットがあります。

こうした現状からか、「布基礎よりベタ基礎のほうが強い」という言い方がされるようになりました。しかし、かならずしもそうではありません。一般に、ベタ基礎のほうが不同沈下を起こしにくいのは事実ですが、地盤によっては布基礎のほうが安全な場合もあります。また、鉄骨系プレハブ住宅では、力の集中する部分を重点的に支えたほうが全体が安定するため、いまでも布基礎が標準仕様になっています。

このように、「ベタ基礎のほうが布基礎より優れている」とは一概にいえないことを覚えておいてください。

 

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この記事を書いた人

モリタマネジメント株式会社 代表取締役

宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、ファイナンシャルプランナー、増改築相談員、二級建築施工管理技士。 LATUバリ建築スクール(インドネシア、バリ)ディプロマ取得。 1952年生まれ 兵庫県出身。早稲田大学卒業後、積水ハウス株式会社に入社、特建事業部(ゼネコン部隊)に配属。主に土地所有者の土地有効利用を中心とした営業に18年間従事する。また自社集客手法の独自企画や金融機関等のセミナー講師も務めて実績をあげる。 在籍期間の完工実績棟数は387棟。全国特建事業部表彰(特建営業300人中1位)、社長表彰(全社営業3800人中2位)、全社チーム別獲得粗利益表彰(全社全900チーム中1位)などの記録多数。退職するまでプレーイングマネージャーにこだわり続けた。 94年に建築リフォーム会社を設立し、現在まで22年間でテナントビル・マンション、店舗、住宅などのリフォーム工事を中心に約4000件余を完工。不動産の事業化プランニング、賃貸収益物件 (テナントビル、マンション)や店舗の収益最大化手法には定評があり、不動産オーナーの熱烈なファンが多い。 2009年、中小企業コンサルを目指して「ナニワの再建屋」桂幹人の門をたたき薫陶を受ける。桂幹人の実践的コンサルティングと自らの経験とを融合させた「モリタメソッド」を完成した。11年、多くの事業家を実践指導し、新たな事業を創る実践コンサルティングを開始、賃貸ビル・マンションオーナーの満室セミナー、工務店の脱下請け事業構築セミナー、中小企業経営者の新規事業構築勉強会(実践的指導)主催。また経営者、営業幹部の個別コンサルティングも行なっている。 指導先業種は、建設業、工務店、リフォーム会社、鉄工所、内装業、建設資材問屋、自動車輸出入業、子ども服セレクトショップメーカー、自費診療専門整体院チェーン、ブライダルを手がける呉服店、ヒーリングサロン、多店舗展開の美容室、大阪黒門市場マグロ専門店、デザイン事務所の新規事業支援等多岐にわたる。

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